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まだ暖機運転しているみなさんへ

 

愛車に乗ってエンジンスタートすると通常より高い回転数でエンジンが回ります。

傾向としては気温もエンジンも冷えている冬の方が通常の回転数に落ち着くまでの時間は長くかかる傾向があります。昔は「暖機運転」のために、乗る数分前からエンジンをかけて、そのまま放置していた人も多く見受けられましたし今でも慣習として行っている方も多いと思います。

では、暖機運転とは一体なんのためにおこなっていたのでしょうか。いまのクルマでも昔同様に暖機運転が必要なのでしょうか。

さまざまな要因から停止時の「暖機運転」が減少するなか、エンジンを労るにはどうすれば良いのでしょうか。

1960年代から1970年代のクルマでは、エンジンの燃料噴出装置にキャブレターが用いられており、暖機運転をしなくては燃料の噴出がうまくできず、暖機運転は必須とされていました。

その後、燃料の噴出はキャブレターからインジェクターに進化しましたが、冷間時にエンジンルーム内パーツのクリアランスが広がってしまい、オイルがうまく循環しなかったことから、パーツを熱膨張させるために、暖機運転は継続しておこなわれていました。

ある整備士に暖機運転について尋ねたところ以下のように話がを聞けました。

「エンジンなどをある程度の温度まで温めておくことで、エンジンオイルなどの潤滑油も温まって循環しやすくなるため、パーツが円滑に機能するようになります。

昔では、暖機運転しているほうがクルマに優しいとされていたので、おこなっている人がほとんどだったと認識しています」

しかし、現在では、暖機運転をしなくてはいけないという考えが薄まってきており、一般的に暖機運転をしていない人も多く見られます。

昔は当たり前の行為として多くの人がおこなわれていた暖機運転ですが、クルマが進化し続ける現在でもおこなうことがベストなのでしょうかとの問いに対し「いまのクルマでは、暖機運転をしなくてもとくに問題はなく、説明書にも記載していることはほとんどありません」と話します。

いまのクルマで基本的に、暖機運転を推奨しなくなった主な理由としては、環境問題への配慮が挙げられます。

近年では、クルマの排気ガスや騒音などが問題となっており、地域によっては条例において、アイドリング状態での駐停車が禁止されている場合もあります。

例えば、東京都では「環境確保条例」の第52条「運転者の義務」において、「自動車等、駐車または停車するときは、エンジンを停止する(アイドリングストップ)義務があります」と記されています。

このように環境への配慮が進んでいることで、アイドリング状態を保持する暖機運転は、一般的に推奨されないものとなりました。

環境への配慮は避けて通れない取り組みですが、一方の車のコンディションを考慮した場合、暖気運転なしはクルマに負担はかからないのでしょうか?

暖機運転が推奨されなくなったもうひとつの理由として、クルマ自体の性能の進化が考えられます。

近年のクルマでは、基本的にあらゆるパーツが電子制御されており、例えばパワーステアリングなども、昔はオイルを要する油圧式でしたが、近年ではオイルを必要としない電動式となっています。

電子制御のパーツでは、パーツが温められていない状態からでも、それぞれの性能を十分に発揮できるようになっているうえに、オイルも進化しており、冷えた状態でも円滑に循環するようになっています。

前述のように、クルマやオイルがどのような状態であっても、パーツの性能を発揮できるように進化していることから、暖機運転は近年のクルマには不要であるといえるようです。

ただし、クルマのことを考えた場合には、暖機運転はしても損はないと考えられるうえに、一部では例外的なケースも見受けられます。

前出の整備士は、暖機運転の例外的なケースについて以下のように話します。

「冬などの寒い時期に限っては、エンジンルーム内の温度が非常に低温になっていることもあり、パーツ類やオイルが過剰に冷却されていることが予想されます。

そうした状況では、できる範囲で暖機運転をした方が望ましいでしょう」

暖機運転は、環境問題への配慮やクルマの進化から、現在は推奨されている行為ではありませんが、現在では代わりに「暖機走行」を推奨している識者も多いようです。

暖機走行とは、エンジンをかけて発進後、数分間は交通を妨げない程度に、低めの回転数を意識して運転することです。

実際にトヨタ「ヤリス」の取扱説明書では「エンジンが冷えた状態で空ぶかししないでください」(ガソリン仕様の取扱説明書より)などと記載されています。

そのため、排気ガスや騒音といった環境問題もクリアしつつ、暖機走行をおこなうのがクルマにとって優しい行為といえるかもしれません。いずれにしても、余裕を持った準備と相好を心がけることが、環境と車のコンディションのバランスを保つと共に事故防止につながります。

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